さいたまの田圃景色:SAITAMA Countryside



平日でも休日でも、都内に出かける予定のない場合は、自転車に乗ってご近所に出かけては、みかけた景色を撮影しています。僕の住んでいる町・鷲宮は、中途半端な郊外ですが、ちょっと住宅地から離れると日本の田舎の風景が見られて、驚かされたり、癒されたりとなかなか楽しいのです。

なんでもない、片田舎の景色を撮影した写真を「さいたまの田圃景色:Saitama Countryside」として、時折、紹介していければと思います。


聖地巡礼の聖地?


鷲宮という町は埼玉県の北の外れにあり、以前は独立した町ですが、平成の大合併からちょっと遅れて、隣の久喜市、栗橋町、菖蒲町と一市三町の大合併により、いまは久喜市の一部となっています。久喜市は駅上を東北新幹線が通っているにも関わらず、停車駅誘致できず、新幹線の騒音だけを置いて行かれてしまう、ちょっとアレな駅です。

鷲宮の歴史は、古墳時代の創建「関東最古の大社」をうたう、平安時代には征夷大将軍の坂上田村麻呂が蝦夷征伐の際に武運を祈るために立ち寄ったとされる『鷲宮神社』がある古い寺社町です。ただし、歴史の文献に現れるのは『吾妻鏡』の1251年(建長3年)の記載が最初で、最古であるかは定かではありません。もっともこの辺は縄文期の遺跡(鷲宮堀内遺跡)も見つかっており、土地そのものの歴史は古いようです。

それよりも、鷲宮神社といえば、“「らきすた」の” と言った方が、知っている人なら知ってるレベルではなく、アニメ好きだけでなく、町おこしや地域活性化に関わる方なら、知らない人はいないという、アニメの聖地巡礼で成功を収めた町として、ご存知かと思います。一時期の騒ぎからはすっかり落ち着いてしまいましたが、それでもたまに神社を通りかかると、聖地巡礼にきた「らきすた」ファンの姿を見かけることがあります。ちょっと前には大鳥居が崩壊して、話題になったりしました。


中途半端な田舎・鷲宮


鷲宮は、埼玉とはいっても茨城や栃木に隣り合わせで、利根川まであとわずかという、自転車でも30分ほどで河川敷に出ることができる、まさに片田舎にあります。

それでもJR東鷲宮駅から東京駅(上野東京ライン直通)、新宿駅(湘南新宿ライン直通)までは、いずれもおよそ55分。となりの久喜駅は、銀座や六本木に直通している東武スカイツリーラインの始発駅(半蔵門線を使う方は久喜行という電車をよく見かけると思います)という、交通に恵まれた環境にあります。

都内からはじめて鷲宮を訪れた方は、その交通至便さに改めて驚くという場所だけに、最近の郊外住宅地の倣いどおり、最寄りのJR駅のまわりは整備された駅広場があって、大型のスーパーやモダンな住宅が並ぶ、都会と見間違うほどの街並みがあります。自転車で行ける範囲には、シネコンを備えた巨大なショッピングモールが2つもあります。

鷲宮のもうひとつのウリが、東鷲宮駅から徒歩5分ほどのところにある「百観音温泉」です。日本温泉協会が泉質についてオール5の評価を与えており、全国の日帰り湯5選に加えるほどの高評価で、日本全国から温泉好きがわざわざ入りにくるという温泉なのです。


鷲宮から栗橋へとつづく田圃


そうした都会もどき、大半が埼玉都民という鷲宮ですが、北隣の栗橋方面にむかってちょっと自転車を走らせると、養鶏場があったり、蔵のある古い農家があって、この数十メールはある大きな木が見えると、そこからは景色が一変します。





小さな橋をわたると急に視界が開け、こんなおだやかな景色が広がります。この小川は田圃に水を供給するただの農業用水に見えますが、下流に行くに従ってだんだん川幅が広くなり、最後は東京湾に注ぐ中川になるのです。




特に梅雨に近い時期になると田んぼに水が満ちて、まるで大きな湖のように変わります。見渡す限りの田園を目の当たりにすると、この国が稲作の盛んな島だったことを思い起こさせます。埼玉はよく海なし県、などと言われます、こんなに水をたたえたみずみずしいところでもあるのです。

田圃を自転車でどんどん行くと、ほどなく隣町との境にある県道に出ます。その県道が鉄道をまたぐ陸橋にあがると電車が水面を走るかのような景色が見えます。

まるで「千と千尋の神隠し」のワンシーンのようです。

宇都宮線(東北本線)を跨ぐ陸橋から、
田圃の海を行く、いまはもう見られなくなった国鉄色の特急電車


こんなに近くで日本の原風景との出会いを独り占めできる、そんな小さな幸せに浸ることができるのです。

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